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消費生活支援事業 悪徳商法に対しての啓発・防衛活動

若年層・高齢者や知的障害者を対象にした悪質商法が蔓延している。とりわけ、架空請求などの不正請求は2004年以降、グリーンコープが展開する九州等の各エリアで大幅に増加しており、消費生活センターへの相談件数が前年比7~10倍で推移する時期もあった。そのため、悪質業者の手口などといった情報を共有し、生活者の予備知識を広めることが大切になる。具体的には、次のような活動を展開している。

①啓発活動
金銭教育事業と連携して、悪質商法の実態を知らせていく。準備が進んだ段階で、地域単位の被害防止教育(学習会など)に取り組んでいく予定。現在は機関紙を通じて取り組んでいる。

②研修・学習会
年1回、グリーンコープの福祉事業・店舗事業・共同購入事業において悪質商法予防学習会を開き、職員・ワーカーズが組合員に向けて予防を呼びかけていけるよう、職員・ワーカーズ教育を推進する。たとえば、福岡県警や消費生活センターに協力を要請し職場研修を計画しているが、将来的には、最新情報を把握しながら職員・ワーカーズによる「生活見守り隊」の育成を目指していきたい。

③予防教育
最寄りの消費生活センターなどとの連携により予防教育を進め、緊急相談にも応じる体制を敷いている。

④被害対策
被害相談については、後述する「生活再生相談事業」の一環として、悪質業者への対応策を一緒に考えていく。

金銭教育事業 多重債務の予防教育と予後教育

キャッシュレス化やクレジットの多様化が進み、ともすれば安易な借金を生み出しやすい環境にあるなか、グリーンコープでは「多重債務の予防教育と予後教育」をキーコンセプトとして金銭教育事業に取り組んでいる。まず、子供から大人まで年齢別の学習会や講演会などを開催しているが、具体的には次のとおりである。

①親子向け学習会(夏休み教室)
グリーンコープ組合員等の親子を対象に、ファイナンシャルプランナー(FP)等が講師を務め、初歩的な金銭教育(お金の使い方などに関し、ゲームを使うたワークショップなど)を実施している。

②大人向け教室(小グループ学習会)
組合員など(10人前後のグループ単位)を対象に、グリーンコープの生活再生相談員や家計とくらしのワーカーズ(FP)等が講師を務める。内容は、「消費者金融とクレジット・カードローンの利息について」「実生活上の借金の危険性」など初歩的な知識から、多重債務に陥ったときの相談所紹介と一般的な対応方針、家計を守るための工夫(水光熱費・保険・共済などの費用の再点検、家計の見直し)など(個々人のライフプラン相談会は別途、有料で実施)。

③講演会(大人のための講演会もしくは子育て講演会)
「子育てのための金銭教育をテーマにした大人向けの講演会」や「悪質商法などから生活を守るための講演会」などを、毎年秋に200~300人規模で企画している。

④家計簿クラブの育成
若い世代は、食料や日用品の購入までもキャッシュレス化が浸透しているにもかかわちず、ほとんどの人たちが家計を管理していない。そのため、次第に債務超過の状態に陥りやすくなる。多重債務予防の観点から、家計を管理していくノウハウ、金融に関する知識を蓄積するため、自分に合った家計簿の作成と学習のためのサークル活動を開始した。グリーンコープ全域で83サークルに500人強が参加し、家計簿クラブが活動している。

なぜ生協で多重債務問題なのか?

グリーンコープは、組合員の“たすけあい”を基本にさまざまな活動に取り組んでいる生活協同組合である。そうした”たすけあい”のなかから、多重債務に陥らないための予防、多重債務に陥ったときとその後の支援やサポートなどを行う「生活再生事業」が誕生した。グリーンコープの「生活再生事業」は、①金銭教育事業、②消費生活支援事業、③生活再生相談事業、④生活再生貸付事業という4つの柱から成り立っている。多重債務問題は従来、全国各地の「被害者の会」や法曹界関係者(弁護士・司法書士)、消費生活センターなどが中心となって取り組んできた。地域によっては、自治体がイニシアチブを発揮している例もある。

しかし、消費者・生活者の視点に立つ生協組織からすれば、多重債務問題の実情はなかなかみえにくく、多重債務状態の人は全国に250万~300万人といわれるにもかかわらず、対岸の火災視ともいうべき状況にあった。こうしたなか、多重債務問題に積極的に取り組んでいる岩手県消費者信用生協との出会い等を契機として、共同購入組合員(約9万人)の商品代金の未払い状況を調査することになった。すると、0.9%の組合員が多重債務状態で支払が遅れているものと推測される結果となった。同時に、グリーンコープ内の職員、パートタイマ―、ワーカーズの債務状況を調査したところ、消費者金融会社から200万円以上の借入残高のある人が1.3%存在することが判明。

さらに、「親族・友人などで、多重債務状態であると思える人が身近にいるか」との質問に対しては、実に32.9%の人が「いる」と回答した。組合員と職場の現状調査から、多重債務問題はきわめて身近な消費者・生活者の問題であり、かつ、問題は水面下で広範に広がっている可能性が高く、状況は予想以上に深刻であることがわかった。他方、この調査を通じて、「相談窓口へのアクセスの悪さ」「個人情報保護への不安」「相談の後に派生する現実諸問題への不安」等から、なかなか相談に行けない実情も理解することができた。

以上を総合的に勘案した場合、債務整理を基本に置いたうえで、「債務整理とは何なのか」「どのような解決策が考えられるのか」を懇切丁寧に説明し、本人が主体的に判断できる状況に押し上げること、法律事務所などへの相談員の同行などが、相談者の問題解決へ向けた自信と確信を得るうえで重要になる。加えて、「債務整理後の生活をどのように再生するのか」「将来を見通し、どのようなライフプランを立てるのか」を家族が集まり相談できるようにしていくこと、そのための相談の場を提供することも必要である。多重債務そのものと、そこから派生する金銭的な諸問題を解決し、生活そのものを再生していぐためには、金融や法律という視点だけでなく、消費者・生活者の視点からの解決の全行程に寄り添うアプローチが重要と理解したためである。

グリーンコープでは、多重債務対策の予防教育として「金銭(管理)教育」と「消費生活支援」に取り組む一方、多重債務問題そのものの解決策として「生活再生相談」と「生活再生貸付」の両事業を準備することとし、2006年8月21日、福岡市博多区にグリーンコープ生活再生柑談室を開設した。2008年4月からは、福岡県多重債務者生活再生相談窓口が福岡県との“協働事業”として開始され、北九州市、直方市、久留米市にも相談室を増設し、福岡県内4ヵ所で生活再生相談・貸付に取り組む体制を構築している。

カウンセラーの育成について

最も必要なのが、相談員を育成するシステムやインストラクターである。相談員に必要なスキルを要約すると、

①相談者の客観的状況(隠れた主訴を含めて。特に、昨今はうつ状態になって訪れる方がほとんどである)を把握するなかで、

②どのような段取りで、どうすればいいのかを洞察提案(提案能力)し、

③それが相談者に受け入れられるものなのかを検証し(目標実現への動機づけ)、

④もし、受入れがむずかしい場合は実現可能な代替案を提案し、

⑤個別案件ごとに解決に向けて行動を起こし(ときには同行し)、

⑥そして、この一連の作業に向けて信頼関係を醸成できるか(傾聴と受容に傾注する)、といったことになろう。

このようなスキルをもつかもたないかによって、A相談員担当の相談者は解決に向けての実行が行われる一方、B相談員担当の相談者は解決に向けての実行もなく、タライ回しといった結果となり、まさに天国と地獄の様相になるのである。「たかがカウンセリング、されどカウンセリング」なのである。いくら法的知識等を披歴しでも、本人が行動を起こさなければなんら解決に結びつかないため、相談員としてのカウンセリングの責務は重大である。

家庭や家族などのコミュニティが希薄になっている今日の社会のなかで、新たなコミユミティの存在としても重要であり、その職務には、相談者の人生を左右するといっても過言ではないほどの役割が存在する。カウンセラーの育成と相談員資質のレベル平準化のためには、精神科医や臨床心理士等はもとより、相談機関等の第一線で活躍している方が固有で体得している「暗黙知」(個々が体得している知識や技能)を「形式知」(マニュアル化、電子化、可視化、音声化等)に置き換える研究とその体系化の取組みが必要であろう。

そして、この職務が社会的に認知されるためにも、このような職務に対して、なんらかの民間の資格制度が位置づけられていくことを期待したい。今日の格差社会を考慮すればするほど、相談者に真に向き合った生活再生のための相談を、より実効性のある形で行えるようなレベルと確固たる基盤をもった相談窓口で行うことが必要であると考える。そして、このような相談窓口は、新たなコミュニティの創造につながるはずであり、経済的貧困という側面だけでなく、“心の貧困”を招いている日本社会に歯止めをかける存在になっていくものと確信する。

このような施策が機能しないまま、格差社会の可視化が進み、ホームレス、生活困窮者や失業者の増大はもとより、共同社会の崩壊のシンボリックな事象として、自殺、事件、事故、児童虐待、DV、一家離散などが増加・続発しなければ、と願わずにいられない。寄り添った実効性ある生活相談には、相応の経費がかかる。また、生活を再建させるための多額ではない新たなお金の流れを構築しなければならない。民間組織がこのような相談窓口として継続して運営していけるような施策がとられ、社会に必要なインフラとして認知され、そして各地に設置されていくことを期待したい。

東京都多重債務者生活再生事業とは

東京都多重債務者生活再生事業においては、2009年度より東京三弁護士会との連携のもと、毎週火・木曜日に弁護士派遣による同席相談を実施している。また、債務整理の受任先として、弁護士会、司法書士会、日本クレジットカウンセリング協会、法テラスとも提携が始まり、ようやく債務整理と生活再建に向けた相乗的取組みが始まった。しかし、2008年3月末の事業開始当初においては、次のような否定的な見解や誤解が法曹界等にあった。

①生活再生融資は要は「おまとめローン」ではないか?

②融資より破産したほうが生活再生に結びつくのではないか?

③保証人をつけることは借金の拡散につながるのではないか?

④任意分割返済によれば利息は不要になるのに、金利をつけてまで貸す必要があるのか?

⑤金利の高い独自融資に誘導しているのではないか?

⑥相談は、法律相談で非弁行為に当たるのではないか?

2009年度から始まった同席相談によって、このような偏見・誤解は払拭されつつあるが、さらに債務整理と生活再生の実効性を高めていくことを目指していきたいと考えている。なお、同席相談が始まっで以降、実務上発生している課題として、債務整理に係る報酬の費用格差の問題がある。相談者にとっては、費用の支払もままならない生活環境の方が多いうえに、生活再生の立場からも格安であったほうが望ましい。現行の費用基準は、相談現場からみると比較する対象がないので根拠が希薄ではあるが、高度な法律的事件を除けば、事件の性質上もっとりーズナブルな費用設定に改定していただきたいことを特に弁護士会に対しては切望したい。

また、弁護士と司法書士の事件の受任区分については、簡裁代理権の範囲が、債務金額が1件140万円なのか総額140万円なのかで双方の見解が異なっている。東京都制度においては、総額140万円での区分で運用を図ってはいるか、特に任意整理案件の費用では司法書士のほうが格安であることから、相談者の立場に立った結論が出されることも要望したい。また、グリーンコープふくおかにおいても、生活再生貸付について当初は福岡弁護士会から猛反対を受けていたのであるが、今日では協力弁護士制度により有機的な連携が行われている。東京都多重債務者生活再生事業も含め、いずれも当然に家族を交えた相談者に向き合ったきめ細かい事情聴取とカウンセリングにより、家計簿管理をはじめ、生活保護や各種制度の利用や住居の斡旋を行うなどして生活再生への支援を行っているのである。

多重債務問題の根底にあるものとは

今日的な雇用の不安定や収入減の社会環境においては、従来の債務整理一辺倒の手法のみでは生活の再建はむずかしい。その要因の1つとして、債務整理の対象になじまない家賃、税金、国保料、公共料金、授業料、保育料、親族・知人からの借金等の金融債務以外の債務を抱えた方が増加していることがあげられる。強引な取立てがあるほうに先に支払うため、それ以外のところには支払わないという現象が実際に起きている。当法人(一般社団法人生活サポート基金)における東京都事業の2008年4月~2009年3月の相談者608名の平均債務の内訳は、住宅ローンを除いた平均金融債務436万円に対して、金融債務以外の債務は270万円となっている。

この事実から、債務整理に際して相談機関と弁護士等との連携にあたっては、特に債務整理後の家計バランスがどうなるかを主眼に置いた債務整理を行っていくことがベストであることは明白であろう。相談者の状況を個別に検証するなかで、貸付制度や給付制度などを駆使し、再生に向けて相談機関、弁護士等の各々がその役割を担うなかで取り組むべきなのである。返済比率(可処分所得の30%以内の返済額)に見合わない任意整理の分割返済、破産により金融債務がなくなったがその他の債務が残ったケース、結果として弁護士費用の対費用効果がなかった事案など、相談者の生活再建に貢献したとは思えない事例が散見される。

相談者は債務整理にあたって、依頼者と受任者の関係性からして最後まで弱い立場に置かれるため、第三者的機関を交えたチェックと緊張関係が存在することが望ましいのはいうまでもない。また、相談者の主訴の背景には、DV、児童虐待などの家族関係の問題や「うつ」など心の問題などが潜んでいる場合が多い。単なる債務整理のみで進めるのではなく、相談者との信頼関係を醸成しながら丁寧に聞き取ることで、生活再建への全体像を描き、相談者への気づきへともっていくことが必要である。

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